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東京高等裁判所 平成10年(く)101号 決定 1998年4月17日

少年 M・K(昭和58.8.19生)

主文

原決定を取り消す。

本件を浦和家庭裁判所に差し戻す。

理由

本件抗告の趣意は、少年作成の抗告申立書に記載のとおりであり、初等少年院に送致した原決定の処分は著しく不当であり、教護院に送致すべきである、というのである。

そこで、原審記録(少年調査記録を含む。)に基づき検討するに、本件は、中学2年生である少年が、同級生である双子の弟ほか1名との間で、以前数度にわたり現金を脅し取ったことのある他の同級生から更に現金を脅し取ろうと話し合った上、その同級生に対し、脅したり、肩を殴打する暴行を加えたりして執ように現金を要求し、その母親の介入により未遂に終わったという事案であって、態様は悪質である。しかも少年は、当時学校にはほとんど登校せず、保護者である叔母らの監護に服さずに共犯者らと夜遊びや不良交友を続ける中で、安易に本件非行に加担するに至ったのであって、このような少年の性格、生活状況、保護環境等をも考慮すると、少年に対して基本的な生活習慣、規範意識を修得させるためには、相当期間施設に収容する必要があると認められる。しかしながら、少年にはこれまでに保護処分歴がないこと、共犯者である弟が本件等により教護院送致の保護処分を受けたことなどを考慮すると、少年に対しては児童自立支援施設に送致するのが相当であり、初等少年院に送致した原決定は著しく不当である。論旨は理由がある。

よって、少年法33条2項、少年審判規則50条により、原決定を取り消し、本件を浦和家庭裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 香城敏麿 裁判官 平谷正弘 杉山愼治)

少年の抗告申立書<省略>

〔参考1〕 送致命令

平成10年(く)第101号

決  定

本籍 東京都文京区○○×丁目××番地

住居 埼玉県春日部市○○×丁目×番××号I方

中学生(赤城少年院在院中)

M・K 昭和58年8月19日生

右少年に対する恐喝未遂保護事件について、平成10年3月23日浦和家庭裁判所が言い渡した初等少年院送致決定に対して少年から抗告の申立てがあり、当裁判所は、平成10年4月16日原決定を取り消し、同事件を浦和家庭裁判所に差し戻す旨の決定をしたので、少年審判規則51条1項に従い次のとおり決定する。

主文

赤城少年院長は、M・Kを浦和家庭裁判所に送致しなければならない。

(裁判長裁判官 香城敏麿 裁判官 平谷正弘 杉山愼治)

〔参考2〕 原審(浦和家 平9(少)5071号 平10.3.23決定)<省略>

〔参考3〕 受差戻審(浦和家 平10(少)1236号 平10.4.30決定)<省略>

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